エース誕


新年の瞬間というものは、毎年合法的に昼から酒が飲める口実でしかなかった。
親父の体調を気遣うナース達の鋭い視線が緩むのもこの日だ。
更に今年からは可愛い末っ子の誕生日ときたものだから、ますます酒の量はエスカレートしていき、明け方には甲板におびただしい数のクルーが死屍累々と転がっていた。
そんな中を明け方の闇に紛れて、一人ゆっくりと歩くのは一番隊隊長である。
酔い潰れたクルーに囲まれて、大の字でいびきを上げている今日の主役の頭をつま先で蹴り、マルコは周りを起こさないようひそめた声で言った。

「エース、起きろ」
「…んぁ、何……?」

寝付きも良いが寝起きも良いのがエースの良いところである。
二日酔いで響く頭に顔を顰めるものの、マルコを見るや否やきちんと返事をした。

「日の出、見に行くよい。ついて来い」

エースの戸惑う顔などまるで意に介さず、マルコはさっさとエースを引きずり起こす。

「それとこれ着とけよい。寒いぞ」

そしてばさりと上着をエースに被せるも、エースは心外だと言わんかりに口を尖らせた。

「いらねぇよ、おれ火だぜ?」
「見てるこっちが寒ぃんだよい!」

雪でも降りそうな寒さの中、こいつはいつも通りシャツ一枚羽織っただけである。
視覚的に寒いことを抗議してもマルコに非はないだろう。
無理やり上着を羽織らせると、マルコは揺らめく青い炎を纏わせ、不死鳥へと姿を変えた。

「…何回見ても綺麗だよなぁ」

エースの感嘆に口元だけ笑ってみせると、マルコはエースを背に乗せて冴え渡った冬の空へ一つ羽ばたいた。

顔に突き刺さる冷気がエースの息を凍らせる。炎でなければ凍えてしまいそうな空の温度のお陰で、お互いの体温が浮き彫りになりる。
マルコの首に腕を回していたエースは、その存在感にどこか安心してひとつ白い息を吐いた。

しばらく真上に飛んで、雲一つない冬の空に停滞する。
果たしてなぜ自分がここに付き合わされたのかわからなかったエースだったが、ようやくその意味を理解した。

エースの目の前に広がる広大な海。
水平線の向こうに一筋光が走ると、その光は闇を押し上げてゆっくりと表を上げる。
薄闇が徐々に光に食われて行く。
毎日毎日、同じ光は夜から目覚めているというのに、足元に見る日の出というのは、どこか特別だ。

「う…わぁ…」

そして何より、今日この日の光は、一番まっさらな光である。
エースが目の当たりにした太陽の光は美しさと力強さを持ち、確かな存在感を放っていた。
その感動は、ちょっと言葉にできない。

「綺麗だろい」
「うん」
「お前の生まれた日だ」
「…うん」
「これをお前に見せたかったんだよい」

マルコは満足そうに朝日を眺めながら言った。
まだ目覚めたばかりの光は柔らかく二人の全身を包む。
その温度に
まるで家族に出会ったかのようにその光にふわりと笑うエースを見て、マルコはふと呟いた。

「…おれの羽が背中にあったらよかったのによい」
「え、おっさんの天使はちょっと…」
「そういう意味じゃねぇよい!」

まさかの切り返しにあははとひとしきり笑い、気が済むとエースはふとマルコの首に腕を回した。

「わかってるよ。そしたら抱きしめて飛んでくれるんだろ?」

笑ったくせに真意は汲むエースにマルコは憎らしく視線を送った。

「いいよ。おれ、鳥のマルコも好きだからさ」

だから、とエースは続ける。

「今はおれが抱いといてやるよ」

ぎゅ、とエースはマルコの首に回した腕に力を込める。

「ははっ、もふもふだ」

そうやって笑うエースを言葉なく見つめて、マルコはもう一度大きく羽ばたいた。

「そろそろ戻るよい。誕生日の末っ子独り占めにしてたらあいつらになに言われるか分かったもんじゃねぇ」

そしてマルコは一度旋回すると、今度は緩やかに空を滑走する。
下降する風がエースの頬を掠め、日の光で反射する海面が見えた頃、白鯨を視界に捉えた。

「なぁマルコ」
「なんだ?」
「…ありがと」

顔をマルコの青い羽に埋めて、囁くようにエースは呟いた。

「またいつでも連れて来てやるよい」

柔らかく返したマルコの声に、エースの笑顔が朝日に溶けた。


マルエ版耳○すま○ば…苦笑
あんまりお誕生日って感じじゃないんですが。
マルコさんは物じゃなくて行動でお祝いしたりしないかなーという妄想です。
山も落ちもなくてすみません!こういうのが大好きでさ!!←
年末辺りからもやっとしていた妄想だったんですが、書いてみたら本当にヤマもオチも谷もなかった!あちゃー!
約一ヶ月遅れのエース誕!
誕生日おめでとうエース!!!
今年も兄ちゃん愛してる!!!
お粗末さまでした!!!

2011/01/27