苦しくて苦しくてどうしようもない夢を見た。
酷く疲れて目を覚ますと、知らない天井だった。

「……?」
「あ!目、覚めた!?キャプテーン!麦わらさん目ぇ覚ましたよー!」

クマが二本足で歩いて喋ってる。
なんだあれ、おもしれぇ…とルフィが思っていると、部屋のドアが開いた。

「気分はどうだ?麦わら屋」

クマと入れ替わりで入ってきた男。
目の下の黒い隈、帽子、指の入れ墨。

あれ、こいつどっかで…
ルフィはぼんやり思う。

「覚えてるか?」

「…あ、お前あの時の…なんだっけ、シャボンティ諸島で…」

確かさっきの二本足で歩くクマ連れてた奴。

「そうじゃねぇ、なんでここにいるのかだ」
「え…あれ…おれ…」
「お前、他の仲間はどうした?一人で来たのか?あの時見かけた奴らは一人も…」
「…ゾロたち…?……あれ……おれ………おれ……っ」

がばっとそこで飛び起きた。

「エース!!!」

ルフィの唇から血が引いていく。
身体に力が入らない。
包帯が巻かれた腕が震える。

「なぁ!エースは!!?エースはどうなった!!?」

力の入らない身体を無理に動かして、ルフィはローに掴みかかった。

「エースは!?この船に乗ってんのか?なんでおれはここにいるんだ!?なぁ!?」

「火拳のエースは死んだよ」

なんとも朝食のメニューでも口にするような声音だった。
それでも、現実味がない。
ルフィの中に、その言葉を届かせることはできなかった。

「そんなはずねぇよ!兄ちゃんは強いんだ!!あんな奴らにやられるはずねぇ!」

「…事実だ」

「そんなはずねぇ!!」

「落ち着け、麦わら屋」

「エース!…エース!!」

瞬間、ローはルフィの喉を掴み、無理やりベッドに押し付けて冷たく言った。

「落ち着けって言ってんだろ、麦わら屋」

肩で息をするルフィを抑える手に、じわり、と、ルフィの体温を感じる。
それはとても平熱とはいえない温度で、38.7度ってとこだな、とローは口に出さずに思った。
怪我のせいで熱も出たのだろうが、無茶な戦い方をした反動だ。
一体何をどれだけ酷使したらこんなことになるんだ。

「エース…エー…スっ!!」

ルフィの悲鳴は止まなかった。

「あまり同じことを言わせるなよ、麦わら屋。どうして自分の命が助かったのかよく思い出すんだな」

ローは、一度言葉を切った。

「ここで殺したって良いんだぜ?」

ぎりっとルフィの喉を掴んでいた手に力が入った。
ゴムの身体に効きはしないが、圧迫された喉からは擦り切れた声が漏れる。

「…っぁ…エ…ース…っ、エースぅ!!!」

それでも振り乱した腕は、繋いだ点滴を引きちぎり、ベッドから無理矢理身体を起こそうと躍起になっている。

「ッチ」

突然、ローはもう一方の手で、ルフィの口を塞ぐと、力を込めた。
びくん、と一度ルフィの身体が跳ねて、そして眠るように意識を失う。
力無くうなだれたルフィを軽々と抱き抱えて、ローは呟いた。

「…無茶しやがる」

「キャプテン、麦わらさん大丈夫ですか?」

騒ぎを聞きつけたベポが部屋を覗きに来た。

「あぁ。ちょっと鎮静剤打っただけだ。…暴れやがって。これでしばらくは大人しくするだろ」

抱いた腕に力を込めて、一度だけその体温を感じた。
さっきより熱が上がっている。
とにかく、今は安静が必要だ。
そっとベッドにルフィを寝かせると、点滴の針を取り替える。
もう一度、その腕に針を刺し、側に置いていた桶に浸しておいたタオルを絞って額に置いた。

「ベポ、しばらく様子見といてくれ」
「アイアイ!」
「ジンベイは?」
「大人しいもんですよ」
「こいつもそれくらい大人しくしといて欲しいもんだ」

ふぅ、とため息を吐いて、ローは床に落ちていた麦わら帽子を拾ってサイドボードに置いた。
「…さて」
火拳のエースはもういない。
白ひげも死んだ。
仲間もいない今、こいつはどうするかな。
おとなしく呼吸を整えたルフィの顔を一度だけ見遣る。
手のひらに残る温度を握り締めて、ローは部屋を出た。


end.


妄想ロー→ルでした。
船長病み気味ですみませんでした。
どうみてもハートの海賊団のみなさんが悪い人には見えません。
でもローたんはデフォで変態だといいなと思います。
死の外科医は麦わら屋にご執心。でも片思い。たぎる。

お付き合いありがとうございました!!
お粗末さまでした!!

2010/04/19