躾は飼い主様の責任です
※現パロ(リーマン×高校生)注意
「おかえりー」
主が住処に帰ると、誰もいないと思っていた部屋から、さも当然のように声がかかる。
マルコは驚いてリビングに目をやると、大きなソファからひらひらと手のひらが覗いた。
部屋でくつろいでいるエースが、眺めていた雑誌をサイドテーブルに置いて、身体を起こした。
さながら居候の猫のようだ。
「来てたのかい」
「うん」
「来る時は連絡しろって言ってるだろい」
時計はほぼ真夜中を指している。
一体何時からこの部屋にいるのか。
待ちぼうけさせないようにと、マルコは部屋に来るときは連絡しろと、常々言っていた。
「戻ってこなかったらどうするんだい」
「そんときゃ帰るさ」
あまり遅くなるようなときは部屋に戻らない日もある。
会える時間は貴重だというのに、エースはあまりこの言いつけを守らない。
そんなお小言などものともせずに、エースはソファから飛び降りて、マルコの側に歩み寄る。
「それよりさ、マルコなんか付けてる?」
「ん?何が?」
「なんかいつもと違う匂いする」
エースは着替えようと上着を脱いでいたマルコの背中に顔を埋めて、鼻を鳴らした。
「犬かよい」
その仕草に、背中越しのマルコが笑った。
シャツからは、いつもの匂いに、慣れない甘い香りが混じる。
「今日、食堂で香水ぶちまけた奴がいたんだよい」
それは結構な騒ぎになったらしい。
その場にいた殆どの人間の鼻がいかれるほどに。
「…ほんとに?」
「なんだ、妬いてんのかい」
「……妬いてねぇ」
「浮気するならもっと完璧にやるよい」
「する気なんだ!?」
「まさか」
マルコの大きな手がエースの黒髪をくしゃくしゃと撫でて、笑う。
「ほんとにする気ならこんなこと言わねぇよい。それに、」
ごく自然に、全く抵抗なく、マルコは言い放つ。
「俺はお前に惚れてるから、他は目に入らんよい」
「…っ…!」
全くの、そう、全くの不意打ちを食らったエースの頬は見る間に赤くなる。
何か反論したそうに、その口を何度か開け閉めしたけれど、良い言葉は全く思いつかず、空気を送り出しただけで。
思いのほか得をしたといわんばかりに、その顔を満足そうに見やったマルコは、エースから手を離した。
「さ、メシにするよい」
そしてさっさと着替えを済ますと、その身体でキッチンに向かう。
エースは自分の黒髪から離れた手を名残惜しそうに見つめて、撫で回されていた額に思わず手を置いた。
そして、その背中に声をかける。
「…マルコ、今のわざと?」
マルコは振り返り、何のことを言われたのか判らないような顔をしたが、次の瞬間には、
「さぁ?」
にやり、とあの唇が不敵に笑った。
end
エースくんにマルコさんの背中でふんふんしてもらいたかっただけで書いた話(笑)
マルコさんの匂いは果たしてどんなでしょ〜ね?
おっさん臭派とフローラル派に分かれる気がします(笑)
いや寧ろ獣…いえ、鳥臭で。
鳥臭いかな?(笑)
2010/09/25